この住宅は南紀白浜の中央より山手側(それでも白良浜までは車で5分)、最近になって白浜町の開発公社によって開発された新興住宅地に建つ。団地は地山の形状に従い、北東に向かって雛壇状に造成されている。建主が求めた場所は南西の角地、地盤は岩盤、日当たりの問題はないが風のきついのが気になる敷地。廻りには現代風の(?)住宅が建ち並ぶ。まるで住宅展示場の様相を呈する。
当初より「木の家が欲しい」と希望されていた建主とは「住宅」というものについての考え方に大きな隔たりはなく、基本グリッドを大事にした構造や、吹き抜けを含むオープンな空間構成、高すぎない軒高、大きく出た軒の出、機械設備に頼らない自然素材の家づくり等はスムーズに受け入れて頂いた。ただし、予算の制約は厳しかったので土塗り壁を採用しないことと、家族の成長に合わせて段階的に仕上げていく家づくりを提案をした。結果、2間×3間×3グリッドの構造体と、ガルバリウム鋼板葺きの切り妻大屋根、焼き杉の外壁板、最小限の建具・間仕切り、家の中心に薪ストーブがデンと座るこの住宅の基本骨格が出来上がった。
建主のご厚意で完成見学会を開催させて頂いた。その土地らしい住まい方・住宅のあり方、先人の知恵に学ぶ家づくり(風通しや日差しの制御を含めたパッシブな考え方)の重要性などを見学者に説明していた矢先に雨が降り出した。とたんに、ご近所の窓という窓がパタパタと閉まっていった。現代の平均的な住宅では、もはや小雨にさえ窓を閉めることでしか対処できないのだ。対照的に家全体を大きく包み込み、雨や日差しの制御に対して有効な屋根を持つこの住宅の開口部は大きく開放されたままであった。今更ながらに住宅のあり方の基本に立ち返ることの大切さを思い知った瞬間であった。
この住宅は住まい手と共に成長していく。北側には洗濯物干しがくっつき、竣工当時になかったポーチの階段が完成している。簡単ではあるが道路と段差のある擁壁の上部にはネットの塀が出来上がった。食堂にはお父さんが造った天然木の見事なテーブルがはいり、早くも薪ストーブの薪が用意されはじめていた。当初の計画のとおり、この住宅は家族のあり方の変化にともなってその姿を変えていくのだろう。そして、住宅は、住まい手の「ニーズ」と「思い」から来る手直しに充分応えられる基本性能を有しなければならない。やはり「住まい」とは「買う」ものではない。住まい手が自らの意志で創り上げていくものだ。その手伝いを設計という分野から応援できる事を光栄に思う。
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