敷地は田辺市内、会津川河口近く、入り組んだ住宅地の一角にある。道路は北側と東側にあるがいずれも4メートル未満であり、80坪を超える敷地面積のわりには広さを感じにくい。ここに、家族5人が一体感を感じながら、のびのびと暮らしていける住まいが欲しいとの要望であった。同時に、吉相間取りであることと、南側にお住まいのご両親の立派な和風住宅とバランスの取れる外観であることが求められた。
ご主人は10年以上にわたりまちづくり団体で活躍されてきた人だ。節有りの紀州材をふんだんに使うことや、土塗り壁をはじめとするこの地に残る住文化を大切にした 家づくりをすることによって、快適な住まい心地を機械設備に過度に依存しないで実現しようとする提案や、大工、左官、建具職などの地元職人を使って地域の経済循環 に貢献しようとする提案には理解があった。建物の基本をなす構成や家相などについてはご主人と、使い勝手や工事費の検討については奥さんと役割分担されて段取りは進んだ。
建物は、2間×2間の4グリッド、2間×1.5間の2グリッド、計6グリッド。この部分が2層になって基本架構となる。ここに広縁、玄関、土間、台所、物入れなどの下屋が取り付き全体を形作る。大屋根は日本瓦葺き、下屋はガルバリウム鋼板瓦棒葺きとした。南側開口は庭に面するが、東側は直接道路となる。すぐに「ここに塀をして・・・」と言う話になるが丁寧に説明してご辛抱頂いた。家の廻りに塀を巡らすのは防犯上も、景観上も良くない。その代わり敷地を50センチ程高くすることと、道路との間に石積みと植え込みを設けることで、道行く人の直接の視線を避けながら、積極的にまちなみづくりに参加することとした。
紀南の住宅は当然「夏を旨とする」住宅である。この家も可動間仕切りで各部屋は区切りはしたが、日頃は風通しの良いオープンな空間として使われている。当然、気密・断熱にはそれなりの手当はしていても、冬場には少し大きめの熱量を発生する暖房器具が必要になる。今回は薪ストーブを勧めた。壁内にある土塗り壁は調湿体としてはもちろん、蓄熱体として大変良く機能する。蓄熱体の補助に石積みと土間をストーブの近くに用意した。今年は引っ越しのどさくさでとうとうストーブに火が入ることはなかったが来シーズンからの活躍を楽しみにしている。
特記事項 / 自然素材使用の家、民家型構法の家(木の国の家仕様)、竹小舞土塗り壁
外断熱通気工法
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