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木の国の家
●木の国の家
1-1 山の現状
1-2 住宅を取り巻く現状
1-3 人工林との共生
1-4 木の国の家の提案
2-1 要素の抽出
2-2 グルーピングと考察
2-3 結果
3-1 要素の関係解析
3-2 構造材あらわし構法
   の採用
3-3 基本架構はグリッド
   で構成する
3-4 地域の知恵に学ぶ
3-5 仕様概要
4-1 基礎
4-2 設備配管基礎貫通
   部納まり
4-3 土台・外壁・内壁・
   1階床廻り
4-4 2階床廻り
4-5 外壁上部・桁・屋根・
   軒先廻り
4-6 屋根・棟部
4-7 建物強度
5-1 「節あり並材」使用量
   にみる傾向
5-2 コスト分析に見る傾
   向
6-1 見学者に対するアン
   ケート調査
6-2 調査結果
7-1 居住者に対するヒア
   リング調査
7-2 調査結果
7-3 住まい心地ヒアリン
   グシート
8-1 階層分析法による優
   先順位の解析
8-2 結論
森から住宅を考える
 
木の国の家 活動プロジェクト 中村伸吾建築設計室
中村伸吾




「木の国の家」は大量の人工林を抱える紀州の山から、今後一斉に産出される杉、桧の「節あり並材」に商品性を持たせるための住宅モデルとして開発された。この項では、民家型構法という建築形態を取る「木の国の家」と、現在一般に建てられる在来木造軸組構法の住宅に使用される木材に注目して比較検討を加え、特に「節あり並材」の使用法、使用量にいかなる特徴が見られるのか明らかにし、よって「木の国の家」が人工林との共生に一助となる存在であることを証明したい。

又、在来木造軸組構法の住宅には「洋風」「和風」と大きく二つの様式があり、デザインを始めとして、木材の使用法、使用量共にかなりの違いがあるため、それぞれ異なる比較軸とした。


 
    ▲洋風住宅のイメージ写真     ▲和風住宅のイメージ写真




全体使用量を比較する

「節あり並材」の各タイプにおける使用量は、圧倒的な差となって現れた。「木の国の家」の木材使用量(0.323?/u)は洋風住宅(0.155?/u)の2.08倍、和風住宅(0.205?/u)に比べてさえ1.58倍の使用量である。

現在の洋風住宅は戦後の大量に住宅を供給しなければならない時代の流れに乗って現れた。それまでの特殊で上等な洋館とは区別されるべきものである。物資の少なかった時代に、「どのようにすれば少ない木材で家が建つのか?」「どんな構法なら、専門職を使わずに出来るのか?」周到に考えられた住宅だ。

輸入住宅、2×4住宅、プレファブ住宅との外観上の区別が難しく、一般住宅として広く建設されている。外部にも内部にも木材の存在を知らせるものはない。和風住宅は地域に生き続け、地域と共に変遷を重ねてきたが、近頃は地域の影響よりも住宅産業から大量に放出される情報からの影響の方が大きい。外観はどう見ても和風なのに、和室はひと間しかなく、他は全て大壁だったという例が少なくない。元来、紀南地方の木造住宅の小屋組は、人一人では抱えられない程の牛木の上に小屋丸太が架かり、骨梁を介して馬木が乗り、幾重もの木組みが棟木を支え、全体を構成した。それらが住宅の堅牢さや耐久性を保証したものだが現在の和風住宅にはその面影しかない。

数字は各タイプの特徴を端的に表している。以下に詳細を見ていく。


部位別に比較する

垂木・杉厚板

伐期を迎えた45〜50年生の杉材は、構造材とするにはまだ若く、化粧材とするにも節ありで、薄板に加工すると抜け節が多く、商品としての歩留まりが悪い。柱材・厚板として使用するのが最も適切であるとの判断から、垂木(120×120)、野地板・床板(t=39)としての使用を試みた。

木造民家型構法を採用したのもこれらの採用に有利な構法であったからである。

垂木においては「木の国の家」0.0312?/uと洋風住宅・和風住宅に対してそれぞれ1.99倍・1.13倍の使用量を示す。柱角と同じ大きさのものを半間ピッチに使用した効果である。又、この結果深い軒先が実現でき日差しの制御に大いに役立っている。
 

厚板に関しては0.0907?/uと他のいかなる部位の使用量より多く、効果は圧倒的であることが
分かる。これは洋風住宅の木材全使用量(0.155?/u)の実に59%にあたり、構造部材全ての数量に相当する。「節あり並材」の大量使用は人工林との共生を実現に近づけるのみならず、住居内においても機械設備依存を減らし、良好な住環境を確保するのに役立つ。


無節化粧材

「木の国の家」の特徴は無節材を使用しないことにある。無節材を上等材としてありがたがり、それにしか商品性を見いだせない旧来の価値観では、紀州の山は救われない。「節あり並材」の大量使用を可能にし、住まい手のコンセンサスが得られるデザイン対応がなされた住宅モデルが必要なのだ。

梁・胴差

横架材の使われ方には各タイプの構造のあり方と取り組みが特徴的に現れている。

「木の国の家」では太く大きな部材を、大量に使う。和風住宅では、小屋丸太に代表されるような「木の国の家」で使われるものよりさらに大きな材料を、大架構に架け 渡し、すっきりとした構造体を作る。
 
洋風住宅は、細く華奢な部材(和風住宅比78%)を「木の国の家」よりは少ないが和風住宅より多く使う。 これは和風住宅が比較的経験豊かな大工職によって施工されることが多く、そのため基本に忠実で合理的な架構組が行われ、結果として洋風住宅より木材使用量が少ないものと推察できる。優秀な大工職の技能が残る紀南の地は「木の国の家」が地域のスタンダードとなりうる条件を備える。

柱・土台

柱と土台は各タイプほとんど同じ断面寸法のものを採用する。使用量の差は使用本数の差だと考えられる。「木の国の家」と和風住宅は土塗り壁を採用することが多い、対して洋風住宅はほとんどこれを採用することがない。土塗り壁の場合は貫構造となり柱は半間毎に建つ、断熱材であれば1間おきでよい、この差である。「木の国の家」の0.0448?/uという数字は洋風住宅の1.69倍、和風住宅の1.20倍である。
 

造作材・羽柄材

この項目においても、各タイプの室内仕上げの状況の違いが良く現れている。
「木の国の家」と和風住宅が大きめの造作材(枠、見切り、額縁など)を使い真壁納まりの室内を持つのに対し、洋風住宅は細く細かい部品をたくさん使い大壁納まりとする。使用量は洋風住宅の1.09倍、和風住宅の1.76倍である。


板材・雑材

使用材に大きさの差はあまりない。使用量の違いは使用ヶ所の違いによると思われる。「木の国の家」と和風住宅では外壁に桧、杉の板張りとするが、洋風住宅ではほとんどがサイディング張りとなる。「木の国の家」0.0767?/u、和風住宅0.0815?/uという使用量はともに同タイプの他の部位に比べても多い数字である。洋風住宅の0.0415?/u(ほとんどが雑材)とのそれぞれの差、「木の国の家」0.0352?/u、和風住宅0.0400?/uは「木の国の家」が節あり材、和風住宅が化粧仕上げ材となり内容の差は大きい。



結果

「木の国の家」は在来の木造住宅に比べ、1.5倍〜2倍の「節あり並材」を使用する。最大の効果をもたらすものは杉厚板の大量使用である。又、uあたりの部品点数も多く、新建材等を使用することなく無垢の木材による家づくりを進めていることが数字より判断出来る。構成部材は、ほとんどの部位で太く、大きく、厚い。これは、住宅が確保しなければならない耐久性、耐火性、調湿性、断熱性いずれの分野においても有利方向に作用する。

木材の使用法、使用量から見た「木の国の家」は、伐期を迎えた「節あり並材」を大量に使用し、切れてしまった「山」と「住まい手」の関係を再び繋ぐ、人工林との共生に役立つ住宅モデルといえる。




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住宅建築が地域の経済活動に与える影響は大きなものがある。「木の国の家」は地場産業から全国展開の住宅産業となってしまった「住宅をつくる」という行為を、地域性という言葉をキーワードにして、もう一度地域に取り戻す役目を担っている。「地域の気候風土に適した家を、地域の職人によって施工することにより、経済の地域循環に貢献しよう」という大きな目標を持つ。この項では特に深刻な状況にある木材費、大工職、左官職、建具職(木製)、の工事費を中心に建築費の内訳を分析、考察を加えることにより、「木の国の家」が経済の地域循環に貢献できるタイプの住宅であることを検証したい。

坪単価

「木の国の家」は和風住宅とほぼ同じ坪単価を示し、これは洋風住宅の17%増の金額となる。坪単価は今後、工務がこの構造形式に慣れてくればもう少しリーズナブルなものになることが予想される。一割減あたりを目標にしている。
 
         ▲坪単価(建築費/u)
工事別に比較する

木材費


「木の国の家」に使用する木材費は\29,537/u、洋風住宅の1.78倍、和風住宅の1.06倍にあたる。洋風住宅は木材使用量が少ない上に、大壁構造のため等級の上等な木材は必要としない。しかし、最近ではデザイン上見えないからということで置き去りにされたこれらの木材が欠陥住宅問題の主人公となりつつあり、木材乾燥に対する取り組みなどが本格化しはじめた。和風住宅と「木の国の家」の木材費が使用量の割には差がないのは使用等級の差による。和風住宅は無節材を仕上に使うから使用量の割には高額である。


大工手間

大工手間は洋風住宅、和風住宅ほとんど差がない。「木の国の家」だけが30%程度高くなる。全ての構造材があらわし構造となるため順当なところである。洋風住宅では木がいっさい表に見えない構造であるから大工手間は減らされるばかりで、向上の要素がない。「木の国の家」は構造材あらわしである、和風住宅に比べてもはるかに大工技能の善し悪しが問われる。プレカットとの共存など課題は残すが大工職の技能がいらなくなることは考えられない。


左官工事

左官職は最も仕事量の減少の激しい職種である。経済性、合理性最優先の建築現場では工期の短縮、作業効率の改善の立場から湿式構法は好まれなくなった。現在の住宅では土塗り壁仕様で住宅を建てることは極端に少ない。その結果、和風住宅といえども、塗り仕上げが残るのは和室一室しかないといった住宅も珍しくない。しかもラスボード下地である。後はわずかに基礎の天端均しなどが残るのみである。その傾向は特に洋風住宅に顕著だ。「木の国の家」は土塗り壁を採用する。しかも内部はほとんど珪藻土塗り仕上げである。その結果、工事費は\11,650/u、洋風住宅の6.77倍、和風住宅の2.37倍と劇的に仕事量が増える。


建具工事

建具工事での金額の差は主に木製建具の差による。洋風住宅ではほとんどの木製建具が既製品になった。和風住宅では、襖、障子がかろうじて残るため少しは現場制作費が地元に残る。「木の国の家」では全ての木製建具を現場制作とする。\18.600/uの工事費は、洋風住宅の1.35倍、和風住宅の1.17倍にあたる。木製建具は室内の質感に大きな影響をもたらす。今後、木製建具の工事費はますます増えていくことだろうと推察する。又、そうすることが「木の国の家」にとってもより強く地域性を主張し、他の住宅との差別化を図る方法であろうと感じる。


外壁工事

和風住宅と「木の国の家」では外壁工事の仕上げ材は共通するものも少なくない。その結果、和風住宅との比較では18%割高で収まる。内部に断熱ボード(通気層下地)を施工することを考えれば充分理解できる数字である。対して洋風住宅は「木の国の家」より2.1倍もの金額となる。これはメンテナンスのいらない高額なサイディングを使用するからである。室内の快適性に工事費をさく「木の国の家」とは好対照をなす。

内装工事


和風住宅といえども、最近のものは洋風住宅と変わらぬ室内仕上げになるものが少なくない。プラスターボード下地のビニールクロス貼り。最も安価で、メンテナンスが容易、そして室内環境向上に貢献しない仕上げである。洋風住宅\15.608/u、和風住宅\14.548/uと変わらぬ施工費が両者の変わらぬ仕上げ内容を良くあらわしている。「木の国の家」が\7.154/uと洋風住宅のわずか46%にすぎないのは内装工事に費用がかからないということではなく、内装工事に使用する費用を(主に新建材の購入費)大工仕事、左官仕事木材費等に振り分けるからである。


結 果

外装・内装にかかる費用は「木の国の家」を基準にすると和風住宅で約1.6倍、洋風住宅では2倍を超える。これはほぼ新建材の購入費に比例する。「木の国の家」はそれらに費やす費用を木材や、自然素材の購入と、地元職人の手間賃に振り分ける。それぞれの大工職、左官職、建具職に要する費用を合算すると

「木の国の家」 \59.792 (100%)
和風住宅 \43.323 (72%)
洋風住宅 \38.508 (64%)

となる。

他の職方の費用分担は各タイプでの差があまりない。(屋根工事は仕上げ材料による差である)
「木の国の家」は確実に地元職人の仕事量を増やすことに貢献するタイプの住宅である。
木材材積比較表と、コストデータ比較表より木材価格と使用材積を求めてみると「木材価格・材積分布図」に示す結果となる。つまり


「木の国の家」 は平均単価 \ 91.574 の木材をuあたり 0.3226u 使用する。
和風住宅   \120.645   0.2294u  
洋風住宅   \103.345   0.1602u  

この数字より最も安い木材(節あり並材)を最も消費するのは「木の国の家」であることが分かる。安い単価で、たくさんの木材使用が実現するのは「節あり並材」の有効利用のおかげである。

これらの事柄から「木の国の家」は地域の経済循環に貢献し、環境共生に貢献するタイプの住宅であると判断される。




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和歌山県田辺市新万29-24  Tel. 0739-24-3824

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