1000年を超えて日本の住文化を支えた民家の成り立ちに倣う。歴史が検証した構造には見習うべき合理性があると判断する。「田の字」に代表される基本架構をグリッドとする構法を基本構成の一つに採用する。以下に、その場合の利点を述べる。
構造安定性が増す
| 鉄骨造(柱・梁による構造)の建物で、柱や梁のことを考慮に入れないでプランニングに取りかかることはない。プランニングが進んでいくということは、同時に架構計画も進んでいくことを意味する。プランニングが決定した時には柱位置や、梁構造までの全体構想がまとまっていなければならない。そうでなければ建築は成立しない。在来木造は鉄骨造と同じ構造ではない。しかし、間違いなく、柱と、梁で構成され、それが基本構造となって内部空間を構成する建築物なのだ。この原則に則っていなければつじつまが合わない。 |
あらわし構法による住宅の上棟風景
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平面間取り優先の素人プランも、ちょっとした手直しで、そのまま現実のものにしてしまう日本の木造建築物の技術レベルは世界に誇れるほど高い。しかしそのことが木造建築物の基本を忘れさせてしまった。「木の国の家」では、忠実に基本架構をグリッドにて構成する。そうすることが建物の構造安定性を飛躍的に高めることを古来の民家が歴史で証明している。
参考事例
現実に建築されたものの中より代表的なものを3例紹介する。実際の建築現場では敷地の状況、建築費、住まい手のニーズ、ライフスタイルなどの状況から多様なグリッドが試みられるだろうから参考になればと思う。
Tさんの家
1階
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2階
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梁間4間・桁行き7間の全体の中に、梁間2間・桁行き2間のグリッドが4つ、梁間2間・桁行き1.5間のグリッドが4つの合計8つのグリッドで構成される。南側はデッキ、南西の角には玄関が位置するため外壁は後退する。現在では地廻りはそれぞれの外壁の上部に設定されることが多く変形グリッドとなりそうなケースであるが「木の国の家」の場合グリッドを構成する柱は本来あるべきところに当然のようにある。外部と内部にまたがってグリッドの中に存在する全ての空間を大屋根が包み込む。
グリッドの中心に位置する5本の柱は通し柱となり、そのまま棟木に達する棟持ち柱となる。
又、中央の3本の柱は負担面積が大きく四方差しとなるため6寸の断面を持つ。
「木の国の家」では床剛性の確保を杉厚板のみに頼ることなく必ず火打ち梁を併用する。そ
のため、吹き抜けなどの空間は比較的配置しやすい。この住宅の場合も2階小屋裏にある多目的室と食堂上部の吹き抜けが面白い繋がりとなり独特の空間を作り出す。
基本架構をグリッドにてしっかりと造るということは自由な空間を構成するための大きな要素の一つである。
Kさんの家
1階
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2階
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梁間4間・桁行き5間の全体の中に、梁間・桁行き共に2間のグリッドが4つ、梁間2間・桁行き1間のグリッドが2つの合計6つのグリッドが2層に積み重なり総2階の構成となる。
グリッドの外形がそのまま建物の形となり、基本的な部屋割りはグリッドに従属し、わずかに玄関ポーチだけが下屋として取り付いている。
吹き抜けも持たず非常にシンプルで基本に忠実。地廻りはグリッドの外形の通りに廻り、屋根は切り妻の大屋根となる。経済性と合理性、構造安定性に優れ、住まい手のニーズに対応して将来いかようにも発展させ得る可能性を持つ。中央の通し柱は四方差しとなることから6寸の断面を持つが、2層分の長さが必要なことから特に棟持ちとはしていない。そのため中央胴差し上部には振れ止めの筋交いが取り付く。
Eさんの家
1階
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2階
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梁間3間・桁行き7.5間の基本フレームの中に、梁間3間・桁行き2間のグリッドが3つ半2層に並んで基本架構を構成する。車庫、玄関ポーチ、外部のユーティリティと風呂、便所などの水廻りが下屋として基本フレームに取り付いて全体を構成する。2階ベランダ部も含め下屋部分は桁落ち納まりとし、建物全体の高さを感じさせないデザインとしている。
この住宅の特徴は梁間を優先させて胴差しに3間の長物を用いたことである。横架材は、これがリーズナブルな価格で入手できる最長の物となる。3間架構を特に用いたのには3つの理由がある。1つは通し柱が四方差しとなり耐力を下げることを嫌ったからであり、2つはグリッドを細かく区切りすぎて基本フレームの安定性を失うことを避けたためである。3つは食堂と居間の間に大断面の通し柱を立てたくなかったのである。その代わり、通常の胴差しの位置に(図中黄色線部分)構造梁を設け、渡り顎仕口にて梁間方向中央の胴差しを受けることで補強した。これにより床荷重は梁間・桁行き共に2間のグリッド構成と同程度の荷重負担でよく、架構も安定する。