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木の国の家
●木の国の家
1-1 山の現状
1-2 住宅を取り巻く現状
1-3 人工林との共生
1-4 木の国の家の提案
2-1 要素の抽出
2-2 グルーピングと考察
2-3 結果
3-1 要素の関係解析
3-2 構造材あらわし構法
   の採用
3-3 基本架構はグリッド
   で構成する
3-4 地域の知恵に学ぶ
3-5 仕様概要
4-1 基礎
4-2 設備配管基礎貫通
   部納まり
4-3 土台・外壁・内壁・
   1階床廻り
4-4 2階床廻り
4-5 外壁上部・桁・屋根・
   軒先廻り
4-6 屋根・棟部
4-7 建物強度
5-1 「節あり並材」使用量
   にみる傾向
5-2 コスト分析に見る傾
   向
6-1 見学者に対するアン
   ケート調査
6-2 調査結果
7-1 居住者に対するヒア
   リング調査
7-2 調査結果
7-3 住まい心地ヒアリン
   グシート
8-1 階層分析法による優
   先順位の解析
8-2 結論
森から住宅を考える
 
木の国の家 活動プロジェクト 中村伸吾建築設計室
中村伸吾




森林は人間にとって有益な多くの役割を果たす。最近では地球温暖化が大きな問題となり、二酸化炭素の吸収源としての役割がクローズアップされているが、それ以外にも多くの公益的機能を果たし、木材や食料の供給源としても人間生活と密接に結びつく。


                          森林の公益的機能 (林野庁資料より)
水源かん養機能
森林の土壌が、降水を貯留し、河川へ流れ込む水の量を平準化して洪水、渇水を防ぎ、さらにその過程で水質を浄化する役割
土砂流出防止機能
森林の下層植生や落葉落枝が地表の浸食を抑制する役割
土砂崩壊防止機能
森林が根系を張り巡らすことによって土砂の崩壊を防ぐ役割
保健休養機能
森林が人にやすらぎを与え、余暇を過ごす場として果たしている役割
野生鳥獣保護機能
森林が果たしている野生鳥獣の生息の場としての役割
大気保全機能
森林がその成長過程で二酸化炭素を吸収し、酸素を供給している役割
その他
遺伝子資源の保全、気象緩和、風害・雪害・なだれ・落石などの防止、騒音の防止、魚類の生息環境の保全など

日本の森林は過去3回消失の危機に見舞われた。1回目は7世紀頃。大陸から大規模建築の技術が導入され、畿内流域の森林が消失の危機にさらされた。2回目は16世紀末。戦国時代に建築ブームが起こり全国的に木材消費が増大した。3回目は20世紀前半。第2次世界大戦の後である。現在は4回目の危機に直面しているが、過去と大きく違うのは、今回の荒廃がこれまでの伐採によるものではなく、過度に伐採されないがために起こる荒廃だという点である。
和歌山県における森林率は77%、そのうち人工林率は62%に達する。特に紀南地方においては森林率は90%を超え、人工林率も70%を突破する。全国平均を上回り、県土の過半を超える植林山を有する本県においても、森林の保全は、自然林をいかに保護するかということよりも、人工林とどう共生していくかという問題がより緊急に対応すべき課題であると再認識して問題解決に取り組む必要がある。

人工林は密植して下草を刈り、間伐をして枝打ちをする。こういった自然林にない独特の育成のための循環システムを持って育てられてきた。植え付け本数と間伐をコントロールすることで保持されてきたのである。これらのシステムが正常に機能しなければ人工林は成り立たない。近年の人工林の荒廃は間伐が適正に行われなかったことが大きな原因といえるが、これには50年ほど前までの過伐採による反省と、林業不振による経済的な理由がある。

これまでの林業振興対策は主に人工林育成のための循環システムの維持に対してなされてきた。植林事業や、林道整備事業、下刈り・枝打ちなどの山のメンテナンスに対する補助、間伐材の利用に関する研究事業や開発事業に対する助成などである。しかし、今後の林業は循環システムの維持よりもなお大きな問題を抱える。 それは戦後に大量に植林された木材が揃って伐期 を迎えることによる。和歌山県の人工林の齢級別蓄積量は7〜9齢級のものがピークをなす。 昭和30年代から40年代にかけて国策にて大量に植林された杉、桧が主伐の時期を迎えるのである。これらの多くは並材生産を目的として植裁されており間伐の度合いも進んでいない。国は長伐期政策を打ち出し、伐期を80年に延ばす政策を試みているが、主伐材を商品として現代社会とどう関係づけていくのかの方法論が確立されていなければ問題の先送りにしかならない。
市町村別林野率


和歌山県の齢級別蓄積量

目前に迫る課題は、今後膨大に産出される主伐材(40年生から50年生の「節あり並材」)の需要確保をいかにして行うかにある。今までのように、無節材だけが「商品」、「節あり並材」は二束三文という価値観の延長線上には解決策は見つからない。間伐材といえども、これから生産される間伐材は40年生以上である。「節あり並材」にしっかりとした商品性をもたせる商品開発が急務となる。





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戦後50年、住宅のあり方は激変した。建築家、吉田桂二氏はその著書“民家に学ぶ家づくり”の中で現代住宅のあり方に触れてこう書いている。
「民家は、かつては、日本の住まいの総体であった。それがなぜ滅びなければならなかったのか。今、建てられている多くの家が、なぜ民家と何の関わりもない姿になり変わってしまっているのか。その不自然な変化の中に、ある種の不気味ささえ、感じとることができる。

もちろん、社会の体制が変わり、生活が変わるなど、時代につれて家もまた変化してゆくのは当然のことだが、ある地域に普遍している住まいの姿が、ある時から突然、まったく別物に変わるというのは、そこに住む人が入れ代わらないかぎり、通常のことではありえない。それまでの蓄積を踏まえながら、連続的に、新しい形へと発達、ないしは進化してゆくのが常なのである。してみると、日本の家に見るこの大変化は、異常な事態というよりない。」

大量の住宅供給を迫られた時代に、大手資本が住宅建築の現場に参入し、住宅を建築するという行為が、地場産業の舞台から全国舞台へと移り変わり、住宅産業なる巨大な新しい産業が生み出された。住宅を、住まい手にとって快適なものとして成り立たせていた理屈は、本来よって立つべき住まい手の元を離れた。生産者側の論理で、日本の住宅の特殊性、土着性も顧みられることもなく、西欧型近代化路線に沿って再構築されることとなったのだ。採算性や経済性が過剰に求められ、効率化、合理化、工業化などが急激に進んだ。住宅は高額の商品としての地位を確立していった。耐久消費財として、供給者側で耐用年数が決められ、それに見合った材料生産と、使用が行われる。
商品として高品質で市場競争性豊かではあるが、均質で没個性的な住宅が街にあふれた。地場産業としての住宅建築は衰退を余儀なくされた。住宅から、地域性が喪失していったのである。

しかし、住まい手と地域にとっての不幸はその次の段階から本格的に始まった。圧倒的な情報量の違いから人々の住宅に関する観念が変化し始めたのだ。

住宅着工戸数と木造率の推移

「商売になりやすい」という理由から地域工務店大工職が状況への迎合をはじめ、ここにいたって地域アイデンティティは崩壊をはじめ、伝統技能の衰退が本格的に始まった。
理屈の成り立ちと、それを実現する方法論が、在 来木造とはまったく違うところで出来上がっているメーカーハウスの住宅を無批判に取り入れ、近代洋風の見栄えに憧れ、目に見える部分ばかりに重きを置いたところに最大の間違いがある。現在においてもメーカーハウスの市場に占める割合は20%ほどで、想像するほど高くない。和歌山における、住宅着工戸数に見る木造率は今も60%に近いところで推移している。けれど、私たちに、地域に根ざした住宅が目にとまらないのはこういう理由による。
市中にあふれる在来工法の木造住宅の最大の特徴は、木材がいっさい見えていないことである。見えないのだから木材はどんなものでもいい。もっと安価で、使い易ければ木材でなくても良い。市場原理に任せて木材の代替え品が横行を始めた。新建材と呼ばれるものだ。新建材の大量使用と、木材の隠蔽化は様々な新しい問題を生み出した。基本架構の不在と内部結露による住宅の耐久性と構造耐力の低下、シックハウス、アトピー。見えないことによる職人の意欲の減退と技能の低下、木材消費の低迷。又、用途による空間の細分化は、家族の絆を弱め、開放感を奪い、快適性を損なわしめた。そして機械設備に対する依存を強めた。
現代住宅の代表的な室内
住宅に関わる諸問題を、「地域性」という言葉をキーワードに整理し直してみる必要がある。全ての技術は地域固有の条件に適合しないならば、その地では生きながらえることができないからだ。いかに情報化社会が進み、流通が進歩してもこの条件は変わることがない。住宅が地域性を取り戻すということは、その地の固有の条件に適合するということだ。それは、住まいやすさを保証されるということと同時に、その地に生きる他の生き物とも共生の道を歩むということに他ならない。




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かつて山は里山と呼ばれた。2000年の永きに渡って山は人との「共生」関係の中で成り立ってきた。人はそこから食料を手に入れ、燃料を手に入れ、肥料を手に入れ、建築材料を手に入れてきた。そして、そんな人の生活のあり方が、豊かな生態系を持った山々の存在を可能ならしめた。ほんの50年前まで、私たちは世界中探しても希なほど見事な自然との「共生」関係にあったのだ。

エネルギー源が薪・炭から石油・ガスに転換され、食料はスーパーで手に入れるようになった。腐葉土は化学肥料ができていらなくなり、人は山との繋がりの多くを失った。
里山の風景
山が里山と呼ばれなくなると、人工林の割合が急速に広まった。山と共に生きてきた人たちは木材生産によってそれぞれの生活を支えようと方向をシフトしたのだ。住宅の建築戸数は一時期年間150万戸を数えるまでに至ったが、建築用材の需要は順調ではなかった。住宅を建築するという行為が経済活動に組み込まれ住宅産業として工業化、大量生産化したために、より生産効率に優れた木材代替え品が普及し始めたのだ。木材はそれらと比較され、高額、割れる、曲がる、変色するなど工業材料として劣った材料であるという認識に至った。さらには、阪神大震災以来、地震に弱い、火災に弱いなど一面的なとらえ方の評価をされるに至り、ますます需要の範囲を狭めてしまった。林業は苦境に立たされ、山が荒れた。山の荒廃は水質の悪化や、水量の確保困難、あるいは漁獲量の減少まで引き起こしている。山を取り巻く問題は、山のみの問題に止まることなく広く街に住む人々に等しく降りかかる問題であると認識すべきである。

「保護」と「保存」・・・。たくさんの団体が真剣な取り組みの中で多くの成果を生みだしている。ボランティア色の強いこれらの運動が活発に活動を続けている間に私たちにはしなければならないことがある。それは、かつて山が里山と呼ばれた時代に、街の住民と生活や経済活動を通じて密接に結びつくことで、豊かな生態系を維持し、長期に渡り無理なく環境を保全し共生したように、現代人に持続可能な形で住民と山の関係を再構築することである。



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山の現状、住宅を取り巻く現状に鑑み、現代の私たちに創り得る環境共生・地域循環の形として、「木の国の家」(紀南スタンダード住宅)の開発を提案する。

 
        「木の国の家」は以下の五つの目的を持つ。
1.
節あり並材に商品性を持たせた住宅モデルを開発し、「山」(人工林)と「まち」(生活者)との関係を再構築することによって、環境の保全に貢献する。

2.
「山」(林業家)と「まち」(設計者・施工者・建主)をつなぐ新しい住宅供給システムを創り出すことにより、地場産業の振興を図り、経済の地域循環に貢献する。

3.
住宅を良質紀州材で建築することで、優良な個人財産と、公共財産の蓄積を図る。

4.
紀南のアイデンティティを意識した住宅を開発・建設することにより、居住者の快適生活に寄与すると共に、紀南らしい「まちなみ」の形成に貢献する。

5.
地元職人の仕事量の確保を通じて、技能の復権に貢献する。

本稿では、「節あり並材に商品性を持たせた住宅モデルの開発」を中心に述べる。




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和歌山県田辺市新万29-24  Tel. 0739-24-3824

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