ミカン山に家を建てる 独特の立地が形を決めた
田辺市郊外。海側の市街地から農村部へ。南高梅やミカンの木が植えられた山の、急勾配の坂道を車でどんどん登っていく。もう山頂近くでは?と思う頃、ミカン畑の中に大きな切妻屋根が現れた。西田邸だ。その眺望にしばし言葉を失う。目の前に広がる、雄大な山並みと田園風景のパノラマ。視界を遮る物は何もない、まさに特等席の場所に建っている。
家の中は広々としたリビングダイニングが中心。ここでまず目に飛び込んでくるのが南側一面の掃き出し窓だ。そのままデッキに続いているので、室内と外の景色との境界をまったく感じさせない。ロケーションを最大限に生かした、贅沢なまでの開放感に驚かされる。
周囲のミカン畑を含む土地は実家が所有する農地で、昨年、その一部を借りて家を建てることになった西田拓大さん。だが、当初、ご本人には具体的なビジョンは何もなかったという。
「新築の友人宅でシックハウス症候群を体験したので、自然素材の家がいいということ。あとは昔の農家みたいに家の真ん中に囲炉裏があって、家族がみんな集うような漠然としたイメージがあるだけでした。」
そんな時偶然紹介されたのが、地元の木材を使い、紀州の気候風土に適した家づくりを進めている中村さんだった。初めてこの場所に案内された日、彼の脳裏には、すぐにこの家の姿が浮かんできたそうだ。独特の立地ゆえの見晴らしの良さ、その一方で常に風にさらされるという条件。そこにふさわしいのは、風に逆らわず、共存する家だ。自然を受け入れ自然とともに暮らすスタイル。それは西田さんの想像を遙かに超えた形で実現することとなった。