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メディア掲載記事 中村伸吾建築設計室
ウッディライフ 2003年12月号 No.105 特集「地元の木で家をつくる」より転載

「紀」が「木」に通ずることを思い出させてくれる

子供たちがまだ小さいので、個室は不要。「将来、必要になったら2階に子供部屋を設けることもできますが、当分はこのままでしょうね」

2人の子供たちにとって、開放的なこの家はすべてが遊び場。お母さんが2階に上がると、洸輔くんと奈央ちゃんもすぐにやってきて、追っかけっこがスタート。やんちゃ盛りの二人。
撮影 : 村川 荘兵衛

この家に引っ越してから、テレビを見る時間が減った。これも木の効果なんでしょうね。

温泉とマリンリゾートで有名な白浜。が、改めて見直すと、白浜への道中、車からの景色のほとんどが、山。海岸のすぐ際まで山が迫っている。紀州の深い山並みは、確かに白浜までつながっていた。

海辺に近い里山を開発した展示場のような分譲地のなか、ただ一軒だけが、どっしりと根付くようにして佇んでいた。川村邸である。

ご主人の川村高洋さんと話を進めるにつれ、人一倍の情熱家であることが伝わってくる。父親と同居する話が持ち上がった。実家は築10年の戸建てで、部屋数も多い。が、川村さんはこれがよい機会と周囲を説得し、家を新築することを提案した。選択肢は二つ。温もりのある木の家か、予算内に収まる新建材の家か。予算を気にしてモデルハウスを巡っているうちに、気が付けば、あるメーカーとの契約が進んでいた。

「でも、何か違うという思いを捨てきれず、ここで妥協したら一生に一度の家がニセモノになってしまうと思って、結局、契約を破棄しました」

契約金の半額は戻らない。心機一転、ゼロからの再出発。途端に出会いが巡ってきた。新聞で知った「木の家」の見学会に出向き、その心地よさと理念に感動した川村さんは、その家の設計者、中村伸吾さんにすべてを託そうと決意した。実は、メーカーとの契約を進める最中にも、「木の家」という理念を捨てきれなかった川村さんは、密かに方眼紙に夢の我が家の絵を描いていたという。中村さんとの初回の打ち合わせに持参した方眼紙の自作の間取り図。吹き抜けのあるリビングに、薪ストーブ…。「何よりも、『こう住まいたい』という熱い思いが伝わってきました。その思いを、そのまま民家型構法にあてはめて設計したんです」

中村さんの理念は、「地域性」を取り戻すこと。これにはまず、地域の木を使うこと。柱や梁が内から丸見えになる民家型構法は、「『木』が存分にその存在意義を発揮できる」構法なのだ。夏の日差しが強い紀州では、家の軒を深くするなど、古くから夏を快適に過ごすための工夫を凝らしてきた。問題は冬の寒さであるが、それは川村さんご希望の薪ストーブで解決。夏仕様の紀州の民家に、薪ストーブはうってつけなのだ。


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家具はすべて造りつけ。紀州産ヒノキの間伐材や小径木を利用した台形集成材で造作。
大容量の玄関の収納家具。事前に収納するもののサイズをきっちり計ってから設計した。
お父さまが地元の製材所で買ってきたヒノキの無垢板。建具屋さんにオーダーして、マッチブックにし、味のあるテーブルに仕上げてもらった。
ダイニングの照明カバーには障子を設置し、蛍光灯の光をやわらかに演出キッチンカウンターの内部には食器を収納。

蜜蝋を塗ったり、スノコを干したり、手をかける楽しさを木が教えてくれるんです。

めの細かい吉野の桶材と、木目の大きな四国の船材。紀州材は、近隣産地両方の特徴を足して2で割った、住宅用には好都合の木だ。節は多いが、構造材の厚板であれば支障はない。問題は「節なし」を理想とする製材業や施工会社のこだわりだけ。伐採期を迎えた膨大な量の木と、木の家を望む施主をつなげるために中村さんたちが立ち上げた「紀州木の家ネットワーク」は、林業家、製材業者、大工、建築家、住まい手のすべての理解と共同作業で成り立つ。住まい手にも「作る」意識が必要なのだ。「休日には大工さんより早く現場に到着。足場に登って塗装したことも」
と笑う川村さん。外構からストーブコーナーの縁板まで、完成後もどんどん住まい手の手が加わる川村邸。希望通りのオープンなリビングに響く、子供たちの声。まさに、住まい手と共に成長し、作られていく家である。

最近、川村さんはよく知人の山に入る。薪ストーブ用に木を切るのだ。「子供の頃、遊びに行くのは山。海には『泳ぎに』行くためじゃなく、潜って『魚を捕るために』行ってました。今は山もその感覚です」

観光ではなく、人の生活の中にあってこそ生きる自然がある。山と海と人とがつながる豊かさが、ここ白浜に、再び根付き始めたようだ。

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2階の和室は目下のところ、家族4人の寝室。証明の和室のシェードが趣を感じさせる。
コヨリ状の和紙を編み込んだ畳。イグサ製のものよりも丈夫で、調湿作用に優れている。
吹き抜けの手すりは棚にもなり、本を収納できる。
長く伸びるストーブの排管。意外と冷える白浜の冬も1台で家中が暖まる。
 
ホールにはシンクを埋め込んだ長い机を設置して、家族みんなのスタディコーナーに。熱気がこもらないように天窓を設けた。
柱や梁、タルキ、野地板など、樹齢50〜60年の紀州スギの構造がすべて現れ、力強い印象を与える。
 
 
通気をよくして熱気を逃がすため、2階には窓を多く設けている。エアコンが1台あるが、夏に数回使っただけという。
床は紀州スギ厚板の上に、丈夫で感触のよい信州産カラマツを張り詰めた。
 
西側の外壁には、スギ材の長い格子を設けてモダンなアクセントに。
 
山に入っては作り貯めたストーブ用の薪。チェーンソーの使い方も慣れたもの。
台風対策には強靭な雨戸が不可欠。風情を壊さないよう、戸袋はスギ板でカバー。
 
庇を長く出しているので、小雨程度なら窓を閉めなくても部屋に雨が降りこまない。
落ち着いた雰囲気を醸し出す外壁の焼きスギ。焼きスギが品薄で、四国産のものがやっと入手できた。
 

和歌山はどこにでも木があるんです。その恵みを生活の中で感じていきたい。

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